2学期・後半

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「隼人?」 解決した、わけじゃない。 だけどもう、事は流れ始めたから。 朱莉の父親が、心療内科の医者が、茶飲み友達として母さんが。 周りの大人たちが、朱莉や彼女の母親を、しっかり支えていくだろうから。 「……あんたまさか、これで手ぇ引こうとか思ってないでしょうね」 「もういいだろ。気になるなら向こうの様子は母さんが自分の目で見てくれば」 ――彼女が俺に直接頼って来ない限り。 もう、俺の出る幕はない。 「ふぅん」 えらく低い声で、母さんが言った。 親父は俺と母さんの顔を3回交互に見比べてから、肩を竦めて黙って部屋に引っ込んだ。 俺も母さんが握ったままの手紙を取り返して、部屋に籠りたかった。 何も言われぬうちに。 なのに。 「『あなたに出会えて幸せでした』」 抑揚のないトーンで母さんがそう言った時、何かが俺の中でぷつんと音を立てた。 テーブルの上に並んだものを力任せに払ったら、『ENJOY!』の文字が入ったマグカップが床に叩きつけられて、まっぷたつに割れた。 「ちょっと、隼人!」 驚いたような焦ったような母さんの声。 騒ぎに気付いた親父も慌てて戻ってきて、足元のマグに気付き目を見張る。 こんな風に両親を睨みつけるのは初めてだった。 眼球とその周囲に力が入りすぎて、熱い。 言葉を失った母の手から朱莉の手紙をもぎ取って、俺は部屋に逃げ込んだ。
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