2学期・後半

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「……後悔しないのぉ?」 「うわ! 何覗いてんだお前!」 後ろから肩越しににゅっと顔を出してきた木嶋に焦り、スマホを隠す。 が、メールの送信先が朱莉だとはバレてしまったようだ。 「んだよ、後悔って」 「だって、好きだったんじゃないの?」 「誰がそんなこと」 何で知ってんだよそういうことを。 全否定しておかないと、こういう話には絶対アイツが食いついて来る。 それだけは全力で遠慮―― 「マジで! 何、誰! もしかしてお前!!」 「……遅かったか」 逆サイドからテーブルを飛び越えてきた裕也の襲撃で、手の中のウーロン茶が少し跳ねた。 「勝手に決めんな木嶋。裕也、今のでパンツ濡れたから弁償な」 サークルのクリスマスイベント、という名の、ただの宴会。 強制力のない集まりだけに当然彼氏彼女がいるやつは不参加、の割に、むしろ普段より集まりが良いのはやはり、イベント効果だ。 俺のグラスをもぎ取って近づけた鼻をすんと鳴らした裕也は、「たまには飲めよ」と背中を叩いてくる。 「飲まなきゃ出来ねえ話もあんだろが」 ――それで、簡単に漏らしてはいけない生徒のプライベートをつるりとしゃべってしまった過去を、忘れたわけじゃあるまいに。 「お前の恋バナなら、別に飲まなくても聞いてやるぞ」 「そんなネタあったら今日ここに居ねえ!」 大げさに声を高める裕也を、「確かに」と木嶋が笑う。 宴会の席の隅っこに、結局集まるのはいつものメンツだ。 だけど 「そういう話じゃなくてよ」 声色を変えた裕也の真剣な表情に反応して、崩していた姿勢が少し改まる。 何かを確認するように、裕也と木嶋が視線を絡ませ頷き合った。 そして何故か、 「そういう訳だから、進藤くんも今日は飲もう」 ――俺は木嶋に、酒を注がれる。
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