2学期・前半

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瀬戸朱莉は、乱れのない足取りで淡々と自宅への道を歩いた。 寄り道も、余所見すらせずに。 気付けば通い慣れた彼女の家のごく近くまで来てしまっていて、何をしているんだと自分をたき付ける。 ただ見ているだけなのか? ここまで黙って着いて来て、彼女が家に入るのを見届けたらそれで終わりなのか? 呼び止めるべきだ。 声をかけるべきだ。 話を。 「……!」 目的地寸前、最後の角を曲がる直前になって、唐突に彼女が立ち止まった。 危うく漏れそうになった声を飲み込んで、不甲斐ないことに俺は、咄嗟に電柱の後ろへ隠れていた。 こんなところに隠れたところで丸見えで、見つかったら間抜け極まりない。 だけど今度もやはり、彼女が立ち止まったのは俺の気配に気付いたせいではなかった。 鞄に手を入れる。 そこから再び手が抜かれた時、彼女の手に握られていたのは折り畳みの日傘だった。 のらりと傘を開く彼女の背中から、憂鬱が、滲み出た。 それが。 それすらも。 俺がただの『ハイソサエティアイテム』くらいに思っていたその日傘すらも、お前の枷なのか。 そう思った瞬間――、外してやりたいと切に願ったはずの彼女の枷より先に、俺自身の、枷が外れた。 怯んでいた足が、手が、俺の意思を越えたところで、勝手に動き出した。 走り、追いつく。 彼女が角を曲がる前に。 声すらかけずにその細い腕を――掴んだ。
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