2学期・前半

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行く当てなどなかった。 彼女の家でなければどこでも良かった。 家から大分離れたところで漸く息を吐き歩調を緩めた俺に、朱莉が追いついて来て並ぶ。 「ね、どこ向かってるの?」 俺が聞きたい。 また駅へと向かうのも馬鹿馬鹿しくて、なんとなく足が向いているのは俺の自宅の方向だが。 「……公園、とか?」 座って話が出来ればいい、と安易に浮かんだ案は、不満げな冷めた視線にばっさりと却下される。 せめて屋内、と、眼鏡の奥の瞳が言外に語っていた。 そうは言われてもね。 「俺んちってワケにもね」 屋内だけど。 近いけど。 何せ狭いあの俺の部屋に連れ込んでベッドに座らせる図を想像したら、色々ダメだろうと。 さっきからの流れか、ストーカー、誘拐という単語に続いて拉致監禁とか不穏なワードばかりが浮かんでくる。 「じゃ、元々は?」 は?と、意味が分からず視線を返すと、元々どこかへ行く途中だったんでしょう、と足りない部分を補って質問が繰り返される。 どこへ、と問われれば最終目的地は大学のフットサル場だったが、そこに連れて行ってその場しのぎの楽しみを与えても仕方がないのだ。 腰を据えてきちんと話を聞いてやりたい。 そうでなければ解決策など浮かぶはずもないのだから。 ――まあ、聞いたところで力になれるかなんて分からないが。
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