2学期・前半

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もう駄目だ耐え切れん、さっさと食べ終えて外に逃げよう。 そう思って、ピザを頬張るスピードを上げた時だった。 「……一緒に、聞いていただけますか?」 一転した真剣な面持ちで、朱莉が母に尋ねたのは。 「お前」 いいのか、と続けるつもりだった質問は、口の中いっぱいのピザに邪魔される。 「汚いなぁ、飲み込んでからしゃべりなさいよ」 ツッコんできたのが他でもない母親で、お前にだけは言われたくないと内心悪態を吐きながら睨みつけるのを見て、朱莉はまたクスクスと笑う。 だから、どうしてそんなに楽しそうなんだ。 本当に今からここで例の話をするつもりなのか。 重い話のはずなのに、なんでそんなにリラックスできている。 「心配しないで、セン……」 うっかり出そうになった俺の呼称はやっぱり『センセイ』だったが、彼女はその言葉を途中で飲み込んでさっきと同じように『隼人さん』と言い直した。 「もう、誰かに全部話してしまいたいんです。それに」 達観したようなどこか清々しい顔を、彼女は途中でほんの少しだけ曇らせた。 続いた言葉に気が重くなり、咀嚼を終えたピザが喉を通る音が、いやに大きくリビングに響いた気がした。 「――大人の介入なしに、解決する問題ではないと思うので」 ……本当は分かっていた。 俺1人ではどうにもできない問題だろうということは。 それでも俺が、俺が、俺が――意固地になっていたのは、何でだろう。 無力を思い知らされた気がした。 飲み込んだピザが、さっきとは打って変わって無味だった。
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