少年と少女と

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~少女~ 美味しそうな匂いにつられて冷静さを欠いてたわ…。 そりゃ、そうよね。突然現れて、何言ってんだって感じよね。ここは落ち着いて話しかけてみよう…。 「突然ごめんね、アタシ、〈フリー・マーケット〉って名前なんだけど、貴方が今食べているお肉の美味しそうな匂いにつられてここに来ちゃったの。エヘッ!」 『ああわ(だから)?』 …多分、だからどうしたの?って事よねぇ。 「それでね、アタシお腹が空いてるから、少しでいいから分けて欲しいなぁ~なんて…」 『いああ(嫌だ)。』 ……そうよね、見ず知らずの人に突然、食べ物くださいって言われても、あげる人の方が稀よねぇ。もう少年は、完全にお肉食べるのに夢中だし… 「テントに行けば、ご飯はあるから、諦めて戻るかぁ…。というか、勢いで行動しちゃうなんて、アタシってばホント、困ったちゃん。ハァ…」 そう言って、来た道を戻ろうとすると、 少年は、口に頬張っていた肉をゴクンと喉に流し込み、アタシに声を掛けてきた。 『何だお前、困ってんのか?』 えっ、何なの?思わず呟いた独り言に、急に食い付いて来た!?困ってんのかって聞いてくるって事は、困ってたら助けてくれるのかしら?…いや、今さっき現れた人間が、困ってるってだけで、彼が何かしてくれる訳がない。うん、絶対ない…。 「お腹が空きすぎて、もう一歩も歩けなくて、困ってるの…お願いだから、その美味しそうなお肉、アタシにも分けて。」 勝手にアタシの口が動いた!?でも、いくらなんでもその返答はないわ…。最初となんら変わりないもの…食べているの寄越せって言ってるだけだもの…。 『う~ん…ホントは嫌だけど、そっちに焼いてあるの食っていいぞ。』 ほらね、やっぱりダメ…って、いいのぉ! 「いただきます!!」 そう言って、アタシは少年が指差している方へ猛ダッシュして、何かの動物のももの部分と思われるお肉にかぶりついた。 「ハフッハフッ、ゴキュン!って、美味しいぃ!口に入れた途端、とろける脂、そしてこの赤身の部分の肉の旨味!ねぇ、このお肉って何の肉?」 『水猪(みずいの)。』 …確か、姿、形は猪そのものなんだけど、水にプカプカ浮きながら延々と水とプランクトンを取り続けるだけのって…、まあ、どうでもいっか。
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