第6章 ― 不調和 ―

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 ジョシュはダニエルの背中をさすりながら、彼が落ち着くのを辛抱強く待った。  ダニエルが、精神的なショックから呼吸をしづらくなって居るのは分かっていたが、どう対処していいのかジョシュには分からない。何も出来ないまま、ただただ時間だけが過ぎていく。  途方にくれながら、ジョシュは。 「……おい、大丈夫か?何か僕に出来る事は?」  と、ダニエルに語りかけるのがやっとだ。 「……助…け…て…」  ジョシュの問い掛けに反応をするようにダニエルは、息をつまらせながら小さな悲鳴にも似た声を上げた。ダニエルの喉はヒューヒューと音が鳴り、呼吸を上手くコントロール出来ていない。  頭の芯がジーンと痺れたような感覚と共に嫌な記憶が浮かんでは消えていく。  母親を失った哀しみ。  父親からの暴力と絶望。  見捨てた同僚への罪悪感。  惨劇の恐怖。  色んな感情が混ざりあい、ダニエルは自分でもどうすればいいのかが分からなかった。 ,
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