第6章 ― 不調和 ―

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 ジョシュは、ダニエルが死んでしまったと思った。苦しんでいる彼を助けられなかった無力な自分に嫌気がさす。  ジョシュは項垂れながら、ぐったりとしたダニエルをゆっくり後部座席に寝かせ、上着をかけた。そして、車外に出てガクリと膝をつき地面に拳を叩きつける。  何気なく発した自分の言葉が彼を殺してしまったのだと。後悔とやるせなさが、ジョシュの心を満たしていく。街灯もなく車の往来もない真っ暗な道路の上で、ジョシュは泣いた。  月明かりだけが、優しくジョシュとダニエルが乗っているパトカーを照らしていて、ひんやりと冷たい風が悲しみに暮れたジョシュの肌を撫でていく。  どれくらいのそうしていただろう?不意に、キシリと車体が揺れる音が響いた。辺りは、しんと静まりかえっていたものだから、余計に大きくその音は大きく印象を与えた。  ジョシュは、ビクッと身を震わせて後ろを振り返り車内を見上げる。けど、ジョシュの視線の先には何も見えない。 ,
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