第6章 ― 不調和 ―

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 恐る恐るジョシュは立ち上がり、暗い車内をマグライトで照らした。車内には死んだダニエルが居るはずだ、とジョシュは自分に言い聞かせ中をあらためる。  すると、眩しそうに目を細めジョシュの方を見ているダニエルの姿がそこにあった。しんどそうに、身を起こして 「……すいません、もう大丈夫…です」  と言いながら胸をおさえて深く息を吐き出した。 「もう……平気…なのか?」  身構えながらジョシュは恐る恐るダニエルに問いかけた。するとダニエルは、 「はい、まだちょっと頭がボーっとして息苦しくはありますが、だいぶ楽になりました」  と、申し訳無さそうな素振りを見せる。 「そ…そうか、良かった」  ジョシュは言って、ようやくホっと胸を撫で下ろした。ダニエルの身に何が起きたのかは、ジョシュには解らなかったが、ひとまず危険は去り彼が無事だと言うことに安堵の息をもらす。  そして、フェリー乗り場での事はもう聞くまい、と心の中で誓った。 「ダニエル、前にもこんな風に息が出来なくなった事があるのか?」 「いえ、ない…です。だから、自分でも何が起きたのか分からなくて……」 ,
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