鰐の闇

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彼女の目に映るのは、地面を這いずるおぞましい生き物の姿。 「何?……」 彼女の時間が止まる。 恐怖が心の容量を超え、 「きゃあああああ!」 悲鳴が室内に響き渡る。 彼女はそのまま倒れ、動かなくなった。 「ハルカ! ハルカ!」 残酷な鉄格子を前に、僕は何も出来なかった。 倒れた彼女に駈け寄る事さえも…… 出来損ないのワニは興奮し、頭部を何度も壁に打ち付ける。 若い男は黙ったまま、その様子を見ている。 僕の頬を涙が伝った。 「ハルカ……ハルカ……」 鉄格子の隙間から手を伸ばし、何度も彼女の名前を呼んだ。
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