桜のころ

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「うん。多分中学のクラス会だって言ってた」 「そっかぁ。場所とか判らないかな?」 「んっと、ちょっと待ってて」 「うん」  いずみちゃんは私の想いを察してくれたようにも思えた。感受性の強いコなんだ。  少しして、マンションの入り口からいずみちゃんが出てきた。 「これ、場所が書いてある。駅前のね、反対側にちょっと歩いた所にあるお好み焼屋さん」 「ありがとう」 「ううん。いいよ、このくらい」  いずみちゃんからその地図の書いてある用紙を受け取り、その場所に向かった。    駅を過ぎ少し歩くとそのお好み焼屋さんはすぐに見つかった。店の前で貸切でない事を確かめ、中へと入った。 「いらっしゃい」  店員と目が合う。 「クラス会は?」 「あ、はい。二階のお座敷です」  店員は階段を手のひらで示した。階段を登るときはさすがに緊張した。一段一段事にドキドキが増す感じだ。二階に着く。靴を脱いで上がる。廊下で区切りお座敷が左右に2つに分かれている。どちらからも楽しそうな会話をする声が聞こえる。腰くらいの高さまでガラスで、その上は障子になっている。屈まなくては中のようすは伺えない。私には関係ないクラス会である。結構マズイことかも知れないなんて不安に襲われ、とりあえず携帯で秀之に連絡でもしてからと思った瞬間。 「あれ、誰だっけ?」  知らない男性が部屋から出てきて声を掛けた。 「あの、えっと秀之君って」 「え?岡馬秀之のこと?」 「ええ、はい」  その男性の目が秀之を探す。私もその開いた隙間から中のようすを覗く。  秀之君はいた。隣には女の子がいた。その光景を見ただけで真っ白になった。 「あ、秀之、ちょっと」  秀之君がこっちを向く。目が合う。驚く彼。私は居た堪れなくなり、その場を走り出して逃げた。靴を拾い、走って店を飛び出した。  涙が突き上げた。  駅のすぐ前には小さな公園があった。私はそこのベンチに座り込んだ。  私は何をしたかったんだろ。ただ彼をイタヅラに困らせ、迷惑をかけただけだ。なんて意味の無いバカな行動したんだろ。もう最低だ。涙が溢れて止まらなかった。  そばに桜の木があった。見上げると蕾が膨らんでいた。  もう彼に合わせる顔がない。とにかく謝ろう。帰ってメールで謝ろう。そうするしかない。私は調子に乗りすぎていたんだ。反省しよう。  ここで泣き顔で佇んでいる自分も恥ずかしくなり、立ち上がった。さぁ帰ろう。
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