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私は、その女の子と歩き出した。すぐにそのコが手を繋いできた。こうやって、案内してくれてるんだ。
「お名前は?」
「岡馬いずみ。お姉ちゃんは?」
「川窪美穂。よろしくネ」
そう言った私にいずみちゃんは笑って応えてくれた。
「小学何年生?」
「六年」
「じゃあもうすぐ卒業だよね。私もね、一日に」
その時、私の携帯が鳴った。姉からだった。
「うん、もう駅出た。今向かってるとこ。うん」
通話中、いずみちゃんはキョトンとしていた。
「もうすぐ着くかな?」
いずみちゃんに話しかけた。
「うん、もうすぐそこだよ」
と、ちょっと先の建物を指した。
「あ、もう着くよ。うん分かった、うん。じゃぁまた、あとで」
携帯を切り、少し先を歩いていたいずみちゃんに駆け寄った。
「案内、ありがとう」
「ううん」
「もう一つ聞いていい?」
「なに?」
「ここら辺で三十分くらい時間つぶす所ないかな?」
「時間?」
「うん。お姉ちゃん帰ってくるのに、まだ時間かかるみたいで」
「じゃぁ、ウチ来る?」
「え?いいの?」
「うん」
そう言う訳で私は、いずみちゃんの家にお邪魔することになった。
「どうせ今の時間、ウチ誰もいないし」
ぽつりとエレベーター内で呟いたいずみちゃんが印象的だった。もしかしたら、寂しいのかな、などと考えたが、いずみちゃんは家の鍵を開けて中に入ると、鼻歌なんか歌い出した。
「宇多田ヒカル好きなの?」
「うん、まぁ。あ、そだ、パソコンできる?」
「え?」
「お兄ちゃんの部屋にパソコンあるんだ。やろうよ」
と、いずみちゃんはそのお兄ちゃんの部屋に行ってしまうので、私も付いて行く。
「勝手に入っていいの?」
「うん、どうせ、今日、夜まで帰って来ないの知ってるし」
「そう」
いずみちゃんはパソコンの電源を入れ、立ち上がると慣れた感じでブラウザを開きだした。
その横にいる私はいずみちゃんのお兄ちゃんの部屋を見渡したりした。乱雑に散らかっている。でも、本なんかは、キレイに並べてある。そんな風に感じた後、そういえば、男の人の部屋なんて入ったの初めてかもと思った。
「お兄ちゃんっていくつ?」
「十八。昨日高校の卒業式だったんだよ」
パソコンに向かういずみちゃんが答える。
十八か。私と同じだ。
年齢を聞いて、なんとなく、気になりだして机あたりを見たりする。雑誌やCDが置いてある。その中に宇多田ヒカルのCDを見つける。
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