桜のころ

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 起き上がり、パソコンの電源を入れて部屋を出た。レンジで牛乳をチンする。それを飲みながら、部屋に戻りメールをチェックする。彼からメールが来ていた。  『川窪美穂様。初めてメールします。岡馬秀之です。  昨日は色々、お話できて楽しかったです。それは正直な所、思いがけないことでした。  それは、あなたがキレイだからかもしれない。いきなりこんな事を書いて変な奴と思われるかもしれませんが、素直なメールを書いてみたい。  恋をしたくない訳じゃないけど、今はちょっとっていう部分があって、それをあなたと会う前日になんかも友達と話したりしてて。なのに、あなたと会っていきなりそれが覆されたのは、やっぱりあなたがキレイで。そんなだから、喫茶店であなたに気に入られようとしてる自分がちょっと滑稽だったりもしたんだけど。つまり、恋なんてなんてと嘆いてる奴でも、その渦中に放りこむくらいのあなたは美貌の持ち主だってことじゃないかな。褒めすぎかな?でも、あなたに対して思うことはキレイだなぁって事なんだ。ボクの書いた駄文が読まれてたと聞いても、そんなの取り繕う気も失せるくらい。素っていうか、自然っていうか、ナチュラルっていうか。あの駄文も、エレベーターでのすれ違いも、喫茶店での会話も、このメールも、とにかくボクです。だからなに?って思うかもしれないけど、駆け引きみたいなの無しで書いてみた。読み返さないでこのまま送ります。』  こんなメールが届いた。  要するに、私に恋をしたって事かな。『私は、あなたを好きになりたい』とそれだけ書いて返信した。  夜に、また彼からのメールが届いた。  『あなたは恋がしたいの?』  そうかも知れない。私は恋がしたいのか知れない。高校時代、抑制していたものを卒業した今、どこかに弾けさせたいのだ。  三月十五日。金曜日。  春休みももう二週間経つんだな、と飼い犬のウニと散歩の最中に唐突に思った。  日々が過ぎていく。淡々と。  私はこの休みの間、腹筋くらいしかしていない。あとは犬の散歩。まったく。昨日はホワイトデーだったのか、なんて今気づいた振りでもしたくなる。  ネットには日記を公開してる人が沢山いる。それも面白おかしく。良くも毎日書くことがあるなぁなんて関心もするよ、こうも何もない日常が続く私には。
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