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その時、yasuがハッとした表情で狸に歩み寄る。
「な、何か解ったんですか?」
「先程何て言いました?」
「え? 『しばらく出られないんだし、そろそろ宿でも探さないと……』って」
「それです! ……僕とした事が!」
「“それ”って何です??」
「最初から宿を探せば良かったんですよ! 行きましょう!」
TNTメンバーは足早に歩き始めたyasuを追い掛けて行った。
ホテル・ローム――旅立ちの町の建物は皆3階以下の高さの建物ばかりなので、このホテル・ロームも外観は他の建物と変わりは無い。[ホテル]の看板がなければ民家なのか店舗なのかも判らないだろう。小さなロビーへ入ったyasuはフロントに直行する。
「ようこそホテル・ロームへ。ご宿泊ですか?」
痩せ型の中年男性NPCが笑顔で出迎える。
「実は友人を探してまして……銀兜という人は泊っていますか?」
「ええ、こちらにお泊りです」
yasuの質問に対するフロントのNPCの返答に、他のメンバーは驚く。
「ぇえっ!?」
「マジかよ……」
偶然に驚くTNTメンバーだったが、yasuは続けて言った。
「それではそのお部屋を教えて頂けますか?」
「それはちょっと……」
NPCが返答を渋ると、yasuはそれを気にする様子も無く言葉を続ける。
「それでは2部屋お願いします。それと伝言を頼めますか?」
「いいですよ」
yasuはフロントに伝言を残すと、2つの鍵を持って来て、片方を狸に渡す。
「あ、有難う。宿泊料幾らだった?」
「1人当り2900GPですね」
「うわ、キツいなぁ……」
狸は値段を聞いて焦る。
「仕方ねェな、俺が払ッといてやるよ……」
「ありがとうありがとう、田嶋さん!!」
TNTメンバーは階段を上り、宿泊部屋のある廊下を進む。
「わ、私じゃない!真犯人が私だと!? 笑わせてくれる、ハハ!あんたミステリー作家なれるよ!」
突如聞こえた男の声。
「あ、この声は……!」
「銀兜さんですね」
TNTメンバーはドアに近付き、壁やドアに耳を当てる。
「私がこんな事してどんな得するって言うんだ!?」
「じゃあ、シルバーヘルムってのは何なんだよ! お前の書いたキャラだろうが!!」
「だから……!!」
yasuは耳を壁から離す。
「どうやら思った通り、銀兜さんでは無さそうですね」
「待て!」
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