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猪が迫りyasuは叫ぶが、白井は立ち止ったままくるりと回って猪に背中を向ける。白井の衣装の装飾である翼が猪の鼻先で広がると、猪は急に足を止めて引き返し、そこを田嶋が猪の眼にすれ違い様に木刀を突き刺す。
猪は悲鳴を上げながら転げ回り、ようやく動きを止めた。その場の全ての猪が倒れ、死体は光りに包まれて消える。
「何だ、肉は残らねェのか……」
「食べようと思ってたんですか?」
溜息を吐く田嶋に白井が尋ねる。
「美味しそうですねぇ、猪料理」
「あれ? 肉は?」
クロスボウを担いだダサイノが辺りを見回しながら言った。
「もう、皆肉ばっかり……」
「狸さんも猪に乗りながら叫んでたじゃないですか」
「それは……」
狸は顔を上気させつつ言葉を詰まらせる。
「このゲーム、経験値とか溜まらないからそっちに目が行くんじゃないでしょうか? まぁ、こういうシステムだからしょうがないとは思いますが」
「成程、確かにそういう考え方もありますね。面白い目の付け所です。一応ゲーム内通貨のゴルポンド(GP)はドロップしますが……」
ダサイノの分析にyasuも頷く。ダサイノの言う通りCCCは、プレイヤー自身の行動が全てを決定するため、レベルアップ等のステータス数値の設定は排してあるのだ。
「それにしても結構手間取ったね。あれ、かなり弱い敵だよ?」
「旅立ちの町の郊外に出現するような敵ですからね。いきなり強い敵は出ないでしょうね」
「動物相手は慣れてねェから戦術が取りづれェンだ。演習場に熊が出た時もかなり手こずッた」
「熊!?」
ダサイノは驚きの声を上げる白井を尻目にクロスボウを構える。
「そう言えばそんな事言ってましたね。熊出たら薬でも仕込まない限りこんなクロスボウじゃ役立たずだよ……」
狸はクロスボウを構えた後にしげしげと眺めるダサイノをジト目で見る。
「すぐ武器のせいにして……全くダサイノさんはヘタレだなあ」
「ヘタレだから飛び道具に頼ってるんですよ」
「あっちへ飛ばされた時も、銃を手にしてから途端に態度がデカくなってたもんね」
狸の発言に皆笑い、ダサイノも周りの笑いに合わせて愛想笑いしながら肩を落とした。
「ま~、ノーダメージで片付けられたのは皆流石だね」
「異世界での戦闘は初めてじゃないですからね」
yasuは微笑を浮かべて言った。
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