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目線を下に戻そうとした際、ふと視界に入った一本の電柱─その上に、その黒鴉は存在していた。 存在し、こちらを見ていた。 ─といってもまあ、一般的に鴉と言ったら黒いというイメージではあるので、黒鴉という表現はいささか的を外している気もするのだが、でも、それでも─そんな只でさえ黒い鴉に“黒鴉”という呼び名を付けてしまうくらいに、その鴉は黒かった。 黒曜石のように艶めいた、黒色の鴉。 そして、目を凝らせば確認出来る、第三の脚。 この黒鴉は、あろうことか、脚が三本あった。  そんな不気味で不吉なその鴉を、僕は視界の端で捉えてしまい、そこで固まってしまった。 目が合っている─気がするのだが、果たしてどうなのだろうか。 黒鴉は一向に動こうとせず、こちらをじっと見ている。 僕も、その黒鴉をじっと見やる。 ─というか、目が離せなくなっていた。 惹かれている─って訳でも無いだろうに。  そもそも、太陽が隠れていて辺りが仄かに暗いというその状況が、より黒鴉を引き立てているように思える。 不気味さ、不吉さを増させているように思える。
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