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『死んだような目をしている』
「…へ?」
ふと、そんな声がして、僕は思わず変な声を出してしまった。
雄々しくて、逞しい、男の声だった。
『この平凡な日々に飽き飽きしている、そんな目をしている』
まただ。また、そんな事を言う。
『刺激を、欲しているように見えるが、果たしてどうなのだ?─人間よ』
その言葉を─最後の単語を聞いて、僕は理解した。
これは。この声は。
「黒鴉─お前の…?」
『そんなに刺激を欲しているのならば与えてやろう。暫し、非凡な非日常をくれてやる。その代わり─対価は支払ってもらうがな』
黒鴉は、僕の質問には答えようとはしなかった。
その代わり、そんな良く分からない事を言っていた。
『影だ。影を。影を──私に捧げよ』
「…は?」
言っている事が、本当に分からない。非日常だとか、何だとか。影だとか、捧げよだとか。
いや、それ以上に分からない事が沢山ある。
それ以上に不自然な事がないくらいの不自然が、沢山あるじゃないか。
そう─何故鴉が喋るのか、という事から連なる、様々な疑問が。
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