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あの黒鴉が喋っている事は確かだ。
僕の周りには人はいないはずだし、そもそもこんな厳格そうな声、聞いたこともない。
でも反対に、あの黒鴉が口を─もとい嘴を閉じたままだという事も、極めて不自然だ。
口を開かないで喋るなんて事が、出来るはずもない。
腹話術─なんていう技術がこの世にはあるが、あんな雄々しくてはっきりした声が腹話術で出せるだなんて到底思えない。
そもそも鴉が喋ることにこれだけ違和感を感じないのもおかしな話だ。
僕はここまで、当然のように黒鴉が喋っているという状況を語ってきたが、実際それが一番不自然で不気味なのだ。
でも、それを自然と普通の事だと思わせてしまう“怪しさ”、そして“妖しさ”が、その黒鴉にはあったのだ。
この鴉なら─もしかしたら喋ることが出来ても何らおかしく無いんじゃないかと、そう思えるくらいには、雰囲気が化け物染みていた。
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