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そんな違和感に思考を占領されていると、黒鴉は再び嘴を動かすことなく言葉を発した。
『さあ、どうするのだ、人間よ』
そこで、俺はやっと気付いた。
今までは、言葉の意味を理解しようとする余り、“その事”に対して全く意識していなかったのだが、今回はしっかりと意識してその言葉を聞けた。
この声は、『耳』に直接響くものではなく─『脳』に直接響くものだったのだ。
まるでテレパシーのように、僕の脳内にこだましていたのだ。
それに気付いた僕は、その黒鴉に言った。
「何がなんだか分からないけれど、何か刺激をくれるって言うのなら。僕の日常を変えてくれるのなら。僕はその話に乗ってやる」
多分、そういう事をこの黒鴉は言っていたのだろう。
刺激を与えてやる。日常を変えてやる─と。
だったら僕はそれに縋るべきなのだ。こんなつまらない日常なんて、もううんざりなんだ。
少々上からの物言いになってしまったけれど、それでも。
僕の決意は伝わっただろう。
せめて。せめてこの“夢”の中でくらい─日常を変えてくれ、と。
僕は黒鴉に言ったのだ。
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