229人が本棚に入れています
本棚に追加
「…謝ることないわ。…私こそ、貴方を一人置きざりにして、…ごめんなさい。」
…それが、ずっと消えない傷になってる。
だから、いつまでもアベルは私が心配なんだ。
「…俺は、もう。姉様に会えたから、いい。…こうして、一緒に出掛けられることを神様に感謝しなくちゃ、ね。」
…そう言って、アベルがほころぶように微笑んだ。
「…じゃあ、私も神様に感謝しなくちゃ。」
…こうして、みんなに会えたこと。
色々。紆余曲折を経て今があることが、本当に嬉しい。
「…ところで、姉様?さっきの聞いていい?」
「さっきのって?」
「…姉様、精霊に行って来ますのチューしてたでしょ?」
…あぁ。
「ごめん、ごめん。弟の前で。…精霊全部切っちゃってからの私と精霊との約束なの。…離れても必ず戻るって。」
…そう言った私に、アベルが考えるような仕草をした。
「んー、精霊間の契約関係は全部唇だからね。主従の印も、魔法を引き上げるのも唇から放った言葉だし。だから、姉様も。精霊相手だと抵抗感が薄い。……彼奴等、考えたな。」
…何を?
最初のコメントを投稿しよう!