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『姉様…、会いたい。』
低くかすれた声に、自然と唇が動いた。
…前世から、私は。この子のこうゆう声に弱い。
「うん。じゃあ今すぐそっちに……。」
「………ちょっと、朔夜?水族館、行くんでしょ?」
……はっ。危な…
アベルの魔性の可愛さに引っかかる所だった。
「ごめん、アベル。先輩との約束だから。ね?……お土産買ってくから。」
『(ちっ…。やっぱり邪魔するのは無理か。)…分かった。おとなしくしてるよ。』
「早く元気になって一緒にお出かけしようね?」
『うん。じゃあ、またかけるね。』
……カチャリと切れたケータイを鞄に戻すと、再び溶けかかったパフェにスプーン向けた。
「…美味しい。」
……ふと顔を上げると、食べ終えた壱音先輩が此方を見て、にこにこしていた。
「ふふっ。朔夜、ついてますよ?」
「え……。」
先輩の指が口元の生クリームをすくって、自分の口に運んだ。
…分かってる。この人は、そうゆう事が自然にスムーズに出来る人だから、他意はない。
………顔に一気に熱が集まるのを感じた私は、氷の溶けきった水のグラスを口に傾けた。
暑さのせいだ。…きっと。
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