壱音先輩と水族館。

7/24
前へ
/234ページ
次へ
『姉様…、会いたい。』 低くかすれた声に、自然と唇が動いた。 …前世から、私は。この子のこうゆう声に弱い。 「うん。じゃあ今すぐそっちに……。」 「………ちょっと、朔夜?水族館、行くんでしょ?」 ……はっ。危な… アベルの魔性の可愛さに引っかかる所だった。 「ごめん、アベル。先輩との約束だから。ね?……お土産買ってくから。」 『(ちっ…。やっぱり邪魔するのは無理か。)…分かった。おとなしくしてるよ。』 「早く元気になって一緒にお出かけしようね?」 『うん。じゃあ、またかけるね。』 ……カチャリと切れたケータイを鞄に戻すと、再び溶けかかったパフェにスプーン向けた。 「…美味しい。」 ……ふと顔を上げると、食べ終えた壱音先輩が此方を見て、にこにこしていた。 「ふふっ。朔夜、ついてますよ?」 「え……。」 先輩の指が口元の生クリームをすくって、自分の口に運んだ。 …分かってる。この人は、そうゆう事が自然にスムーズに出来る人だから、他意はない。 ………顔に一気に熱が集まるのを感じた私は、氷の溶けきった水のグラスを口に傾けた。 暑さのせいだ。…きっと。    
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加