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途端に女の子はピクリと肩を跳ねさせる。
あ、ヤバい、驚かせたかも!?
「や、あの、怪しい奴じゃないよ!ここで花火見てたんだけど携帯忘れちゃって……見てない?」
変質者と思われては堪らないと必要以上に慌てて手を振り、一気に用件まで話しきる。
するとその子はゆるゆると顔を上げた。
怯えたように俺を見るその目はくるりと丸く、真っ直ぐな髪と浴衣姿が相まってまるで市松人形みたいにも見える。
「けー、たい?」
それでも小さく呟かれた声に、良かった人間だ、なんてちょっとだけ安堵してしまった。
思ったよりも怯えていたのは俺の方だったみたいで、思わず苦笑いが浮かぶ。
「うん、シルバーの二つ折りの。あのベンチに置いてたんだけど」
極力怖がらせないように目線を合わせるようにしゃがみこみ、知らない?と聞くと、女の子は首を横に振った。
うわ最悪だ……とりあえず次は交番でも行ってみるか。
ガクリとうなだれた頭を上げると、その子はまだ不安げな目で俺を見ていて。
もしかして、やっぱ迷子か?
段々とそんな気もしてきた。
辺りはもう人もまばらで、すっかりいつもの夜の静けさを取り戻している。
まぁ、どうせ交番行くなら連れてくのもいいかも。
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