忘れ物

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そう思った俺は、普段友達には見せないような笑みを張り付けて女の子に話しかけた。 「君はさ、まだ帰らないの?もしかして親とはぐれちゃった?もしよかったら俺今から交番行くけど一緒に行く?」 善意を悪意に取られては大変だ。 俺は断じて誘拐犯ではない!とアピールしながら可愛く小首を傾げる。 すると女の子はちょっとだけ驚いたように目を大きくし、またふるりと首を振った。 「大丈夫、さっき携帯で連絡したからもうすぐ来ると思う」 やっぱり迷子だったのか。 つうか今はこんな子供でも携帯かー俺らん時は考えらんねーな。 「そっか」 ま、なら大丈夫か。それよりも俺の携帯だ。 ほっとした俺は、改めて思い出したそれに立ち上がりながらため息をついた。 「じゃー俺急いで交番行かなきゃなんないからさ、ごめんね」 何となく一人にする後ろめたさはあったけど、大事な携帯君をいつまでもほっぽらかしておく訳にもいかない。 そう言って俺はくるりと踵を返した。 「お兄、ちゃん」 その時、ふと遠慮がちに呼ばれ思わず振り返る。 そこには眉を下げたその子の姿があって。何かを決意したかのようにグッと唇を結ぶと、さっきまでとは違うはっきりとした声で彼女は言った。
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