前だけを見てる

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家に戻ったら哲平さんは社長に電話してた 社長の考えは変わらないみたい 無理に連れ戻したりはしないって 電話を切った哲平さんは なんだかちょっと怒ってるみたいだった 哲平さんも思う事が沢山あるんだろうな ソファーに座る哲平さんの前に立った私は 顔を覗き込むように見て 「顔が怖くなってるよ スマイル、スマイル」 哲平さんの両頬を人差し指でつついた されるがままで避けようともしないから 今度は手のひらで頬を押し潰した 「タコみたい」 無言のままだけど 私を抱き寄せて自分の膝に座らせると 抱きしめられてた なにも言わずに抱きしめられてると ボソボソと話し出した 「親父は同じ過ちを繰り返す気かよ なにがなんでも手離さないもんだろ 俺なら薫になにがあっても手離さない」 「なにがあっても?」 「ああ」 本当のお母さんと深雪さんの事を 言ってるんだろうか 手離さない…か…
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