前だけを見てる

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ホテルのレストランで待ち合わせをして みんなで食事をする事になった シャワーを浴びてから着替えて レストランに向かうと 祥ちゃんと深雪さんはすでに席についてた 哲平さんはちょっと緊張した表情で席につくと 覚悟を決めたのか、自分から話を切り出した 「母さん あの人には会えた?話出来た?」 哲平さんの問いかけに深雪さんは 重い表情のまま答えた 「会えたわ、凄く驚いてた 話もしたのよ 哲平の話」 「そう」 「写真を見て泣いてたわ 素敵な男性に成長してくれたって 感謝されちゃった…」 「それで」 「それでって…」 「あの人は俺に会うなんて言わなかっただろ」 「どうして?」 「写真を依頼したって聞いて 会う気はないって思ったんだ 俺も会う気はないし あの人も会う気はない だから、これで終わりだ 母さんも納得出来ただろ」 「…でもね哲平 里子はもう…」 涙が溢れてその先が言えなかった そんな深雪さんを見て哲平さんは 「母さん あの人の意思を尊重したいんだ 死んだと嘘をついて俺と別れたんだよ 簡単な事じゃなかったと思うんだ 今ならそう思える」 「でも、もう会えなくなるかもしれないのよ」 「でも、あの人は俺に会う事を望んでない だから俺も無理に会いには行かない 分かってよ母さん」 哲平さんの言葉に 深雪さんもそれ以上は何も言えなかった 意地になってるんじゃないんだ 里子さんの気持ちを考えて 自分も会わないって決めたんだ
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