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19XX年。柊11歳。清乃8歳。朽葉6歳。卯月3歳。
***
壱
初夏の風が広大な屋敷の木々の葉をさわさわと揺らす。銀杏の大木の下で幹に寄りかかっているのが、長女の柊。彼女は妹3人にせがまれて、膝の上にある物語を読み聞かせていた所だ。
目を煌めかせて、夢中になって聞いているのは、末の妹卯月。柊の右側で行儀良く座っている。柊の両足の先に、妹に付き合って寝そべりながら聞いているのが、三女の朽葉。物語の結末を知っていても尚、末っ子が聞きたがっているのを見て、黙って聞いている。
……今のところは。という注釈付きだ。本人に意地悪する気持ちは無いが、知っている話の場合、先を話してしまう事が多々ある。
それで卯月とケンカになる事が時々有った。柊の左側で気持ち良さそうに目を閉じているのが、次女の清乃。清乃自身が何度も読んだ内容に飽きて寝てしまったらしい。四姉妹はとても仲が良かった。
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