当代の両翼

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 弐  「そなた達何をしている」  不意に掛けられた声に、寝ていた清乃も飛び起きる。そして、三人とも柊の脇に怯えた顔で座った。そんな妹達に微笑んで安心をさせた柊だが、本当は自身も怖かった。  「お祖父様……。天気が良いので、木陰にて本を読んでいました」  母・里桜の父親――四姉妹にとって、祖父という存在のはずなのに、四姉妹に向けられた視線は冷たいものだった。  「さっさと中に入れ」  柊が笑顔を浮かべて話しているにも関わらず、一瞥するとそれだけ言って踵を返す。  「お祖父様がああ言っているから、中に入ろっか」  柊が三人に声を掛けると、朽葉と卯月が首を振った。  「ひーお姉ちゃん、嫌よ。とても怖いものが中にいるもの」  朽葉が泣きベソ顔で言うと、さっさと歩き始めていた祖父・桐里が足を止めてこちらを振り返った。  「今、何て言った?」  祖父の怖い眼差しに、朽葉が泣き出す。もう一度言ってみろ!と急かす桐里に、首を振るだけの朽葉。桐里が苛々しているのが、柊の目から見ても明らかだった。
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