23人が本棚に入れています
本棚に追加
弐
「そなた達何をしている」
不意に掛けられた声に、寝ていた清乃も飛び起きる。そして、三人とも柊の脇に怯えた顔で座った。そんな妹達に微笑んで安心をさせた柊だが、本当は自身も怖かった。
「お祖父様……。天気が良いので、木陰にて本を読んでいました」
母・里桜の父親――四姉妹にとって、祖父という存在のはずなのに、四姉妹に向けられた視線は冷たいものだった。
「さっさと中に入れ」
柊が笑顔を浮かべて話しているにも関わらず、一瞥するとそれだけ言って踵を返す。
「お祖父様がああ言っているから、中に入ろっか」
柊が三人に声を掛けると、朽葉と卯月が首を振った。
「ひーお姉ちゃん、嫌よ。とても怖いものが中にいるもの」
朽葉が泣きベソ顔で言うと、さっさと歩き始めていた祖父・桐里が足を止めてこちらを振り返った。
「今、何て言った?」
祖父の怖い眼差しに、朽葉が泣き出す。もう一度言ってみろ!と急かす桐里に、首を振るだけの朽葉。桐里が苛々しているのが、柊の目から見ても明らかだった。
最初のコメントを投稿しよう!