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「!!し、しかし大長老様!!このような戯れ言を申しているのですよ......」
先ほどとは大違いの小さな声で、どもりながらも抗議をする男。どうやらこの男は、弱いものに強く強いものには弱いらしい。
「戯れ言かどうかは自分の目で確かめてみたらどうだ」
シグマに促され、男は目を向けた。
「!!」
男の目線の先にいたのは、奏の頬に体をこすりつけてじゃれているキミコの姿だった。
「これでわかったでしょう。人になつかないはずの、魂喰らいがあんなにもなついているわ。奏がクローンであろうと何であろうと、あの子は第五真祖。あなたが口を挟む余地はないわ」
エミエルの冷たくはなった一言で、男は力なくうなだれて静かに椅子に座った。
静かな沈黙がその場を包む中、シグマが小さく咳払いをして口を開いた。
「それでは、おまえたちが説明してほしいと言っていたことについてだが..」
「その必要はありません」
シグマの声を遮ったのは、最早敬意の礼さえ取っていないエミエルだった。
「ということは、何故かわかったのか?」
「はい。大方そこにいるグラッツ様が『第五真祖の力を試してみよう』などといって、ごり押ししたのでしょう」
エミエルがそう言って、グラッツに目を向けると肩をビクリとふるわせて、縮こまった。
「そうだ。よくわかったなエミエル。おかげで無駄な時間を省けた」
シグマはそこでいったん言葉を切ると、真剣な目で奏を見つめた。
「それでは、本題に入ろうか」
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