元老院

12/20
前へ
/195ページ
次へ
 「!!し、しかし大長老様!!このような戯れ言を申しているのですよ......」  先ほどとは大違いの小さな声で、どもりながらも抗議をする男。どうやらこの男は、弱いものに強く強いものには弱いらしい。  「戯れ言かどうかは自分の目で確かめてみたらどうだ」  シグマに促され、男は目を向けた。  「!!」  男の目線の先にいたのは、奏の頬に体をこすりつけてじゃれているキミコの姿だった。  「これでわかったでしょう。人になつかないはずの、魂喰らいがあんなにもなついているわ。奏がクローンであろうと何であろうと、あの子は第五真祖。あなたが口を挟む余地はないわ」  エミエルの冷たくはなった一言で、男は力なくうなだれて静かに椅子に座った。  静かな沈黙がその場を包む中、シグマが小さく咳払いをして口を開いた。  「それでは、おまえたちが説明してほしいと言っていたことについてだが..」  「その必要はありません」  シグマの声を遮ったのは、最早敬意の礼さえ取っていないエミエルだった。  「ということは、何故かわかったのか?」  「はい。大方そこにいるグラッツ様が『第五真祖の力を試してみよう』などといって、ごり押ししたのでしょう」  エミエルがそう言って、グラッツに目を向けると肩をビクリとふるわせて、縮こまった。  「そうだ。よくわかったなエミエル。おかげで無駄な時間を省けた」  シグマはそこでいったん言葉を切ると、真剣な目で奏を見つめた。  「それでは、本題に入ろうか」
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加