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何でこうなった?
何故、こうなった?
こうなることは分かっていたのに。
だからこそ、いつ死んでもいいように、そして死を潔く受け止めるようにしてきた。
……なのに。
俺は……
「青二才が。」
下人はその日も盗みをしていた。
いつもと同じ様な日常にいた。
快晴。
玄関先で空を見上げてそう思う。
冬が近付いてきている所為で、ここ最近はとても寒い。
これ以上寒くなるのか、そう思うと溜め息が無意識のうちにこぼれた。
彼はそれを意識で捉える。
「………何を悩んでいるんだ、俺は?」
その一言で下人は、己が内に芽生えた弱さを摘み取る。
そんなことで悩んでいる暇はない。
悩むくらいなら今日の仕事について考えろ。
それが結果として下人の延命に繋がるのだから。
しかも、今日は良い日ではないか。
先に寒いと述べたが、昨日や一昨日に比べればまだ暖かい。
そう思い、下人は歩みだす。
平安京の道を、ただ生きる為に。
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