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私はある携帯端末を持っていた。一見すれば、どこにでもありそうな携帯端末であるが、これは、ただの携帯端末ではない。これには、他の携帯端末にはない、ある特別な機能が組み込まれていた。それは、『犯罪』だ。
この携帯端末には犯罪に繋がる情報が山のように収められている。ネットワークの普及を逆手にとり、ありとあらゆるデータへと侵入し、そこから犯罪に使えるデータを引き出していくる。最新の犯罪情報が常に、この携帯端末には記録されていた。
そんな危なっかしいモノは持っているだけで、警察に捕まるのではないかと心配になられることだろう。しかし、携帯端末はデータを自動的に保存しておくだけの媒体であり、所持するだけなら直接的な犯罪ではない。もっとも、私は携帯端末を警察に見られるようなヘマはやらないが。
この携帯端末。使用方法は実に簡単で分かりやすい。
例えば、
『大手銀行の警備が手薄になる時間帯は?』と、入力すれば大手銀行の警備情報を引き出し、もっとも手薄になる時間帯を教えてくれる。人の手では、そうはいかない。警備態勢を調べている間に、数日が経ってしまい、いざ、実行しようと思った時には、警備態勢が全く変わってしまって、これまでの調査が全くの無意味になってしまう。だが、携帯端末は即座に調べ上げてくれるから助かる。
私は、この犯罪端末を有意義に使おうと思っている。その場、その場での犯罪検索ではなく長期的な犯罪に活用する。スケジュール機能を大いに活用し、安全で確実な犯罪を起こす。犯罪端末が自動的に組んでくれた犯罪リスト。全ては信用できる情報であり、安心して犯罪に手を染めることができる。
しかし、数ヶ月先までのスケジュールを組んでいて、私はおかしなことに気付いた。
ある日を境に、スケジュールが長期に渡って組めなくなる期間があった。どういう訳か調べてみても、
『すでに予定が組まれています』と、表示されるだけで、詳細は不明のままだった。
もしかしたら、他の犯罪者が予定を先に組んでしまったのかもしれない。だとしたら、完全な出遅れである。
犯罪というのは、数が限られている。大半の犯罪者が望むのは、金が用意に手に入る犯罪だ。当然のことながら、それは限られた犯罪の中でも更に少ない。一度、襲われた銀行は安易に手を出せなくなってしまう。それらを十分に考慮しなければならない。
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