犯罪端末

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「ま、いいか。当分の間、遊んで暮らせるだけの金は稼げるのだから」  犯罪が出来ない期間が長期的にあるのは、心残りではあるが、早い者勝ちなのだから仕方がないこと。犯罪げ稼いだ金で、当分の間、生活していけるよう考えなくてはならないようだ。  それから、私の活躍は目まぐるしかった。毎日のいように、犯罪端末が組んでくれたスケジュールに従って犯罪をこなしていった。ひったくりから大豪邸の金庫から金塊を奪うまで、それこそ数えたらキリがないほどに。ニュースでは連日にように、私がやった犯罪が放送された。私は、それを見ながら酒を飲むのが、何より楽しみであった。  ニュースは連日、必ず一回は放送されるが、どれも別々の犯人としての扱いだった。マスコミの方もまさか、全ては同一の犯人よる犯行だなんて夢にも思わないだろう。だから、一時的に注目される事件であっとしても、非日常のワンシーンのようなものであり、人々の記憶に残ることはなく、すぐに忘れ去れた。同一人物による犯罪だと知っているのは、私だけだ。  そんな日々を過ごす中、私はスケジュール表を見て呟いた。 「そう言えば、そろそれ、例の空白期間だったな」  連日の犯罪に追われ、すっかり忘れていたが、スケジュールが書けなかった空白である期間が迫っていることに気付いた。これで、当分の間は犯罪とは無縁の生活を送らないといけないのか。なんだか、少し味気ない気分がした。  犯罪がある日常になれきった私が、果たして、その退屈な期間を無事に過ごせるのかどうか、半ば不安に思っていた。  そんな時だ。事態は思わぬ方向に動いた。  空白の日が前日に迫りつつあった夜。私の住む家の扉が蹴り破られた。何事かと駆けつけると、ゾロゾロと警官隊が突入してきたのだ。 「木下雪治だな!お前を逮捕する!」  それは、思いがけない訪問者だった。警察が来るなど、全く知らなかった私は抵抗する暇もなく刑事に捕まってしまった。 「ど、どうして、私が犯人だと・・・」 「警察をなめるな!」  両腕に手錠をかけると刑事は、私から犯罪端末を取り上げると何かしらの操作をしてみせた。どうして、警察が犯罪端末を知っているんだ。
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