真実

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「この世界はね、人間達が身勝手に行ってきた戦争ですっかり色をなくしてしまった」 「知ってる。『グロウ戦争』だろ?」 グロウ戦争。オレが産まれるずっと前に、国同士で行われた戦争。戦争では、有毒ガスや爆弾が何度も使われた。  その結果、地球は人が住める環境ではなくなった。人類は地下にあったシェルターに一時的に避難し、地球環境が良くなってから、地上に戻った。もう二度とこんな馬鹿な事をしないようにと、この戦争はグロウ戦争と名付けられたらしい。  青年は、コクリと頷いた。 「でも、なんでグロウ戦争が出てくるんだ。グロウ戦争なんかとっくに昔の話だろ?」 「……この話には続きがあってね。確かに地上は、人間が住める様になったよ。でも……有毒ガスを何度も使ったせいかな。  どんな植物を植えても、途中で枯れてしまった。それにシェルターで育てていた動物達を連れて来ても、原因不明の病気で倒れてしまった。  人間には害はなかったが、何人も飢えで死んでいった……。そして、政府が生き残った者達に取った策は……」 そこまで話すと、青年は皮肉をこめた笑みを浮かべた。その姿は、朝と同じで今にも消えてしまうんじゃないかと思った。
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