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「愚かな研究者達にに作らせた『ガラクタの夢』を見させる事だ」
「ガラクタの夢……?」
聞き覚えのない言葉に、首を傾げた。
「……研究者達は国民の中から、感性がもっとも強く心が純粋な子を選んだ。その子に散々絵本の様な幸せな話を聞かせた後、自分たちが知恵を振り絞って作らせた薬を飲ませ……国民達に催眠術の様な物をかけた。
その薬は、その子と国民達の思考、心を同調させる物なんだ。
国民達はそれ以来、どこかの廃墟で幸せな夢を見てる」
青年は立ち上がると言った。
「毎日学校に行き、毎日子供の顔を見れて、親にたっぷりと愛情を受け、文明という暮らしに囲まれた幻の幸せを、ね」
その言葉に、背筋がゾクッとした。
まさか……。青年は俺の考えに気付いたのか、無言で首を縦に振った。
「そ、んなっ……じゃあ、オレが今まで送っていた生活は、全て夢だって言うの!?」
「……」
「母さんは!? 父さんは!? 先生は!? みんなは!?」
「……落ち着いて」
青年が、窓から下りてきた。猫の様に身軽に着地し、オレの前に立った。
女の様に細くて長い指が、俺の頬を撫でた。
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