オレと名前

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「……あのさ、なんでアンタには見えてオレには見えないの。それにアンタはどうやってガラクタの夢から覚めたの?」 その質問に、一瞬青年の顔が固まった気がした。 「……俺はね、特別なんだろうね。ガラクタの夢からは自分で覚めたんだ。そのせいかな、ガラクタの夢から覚めたはずなのに、俺はガラクタの夢を見てる。そうして、現実世界も見てる」 ……どういう意味だ? 「こういう事」 青年は俺の片手を取ると、自分の右目に被せた。 「……こんな感じで右目ではガラクタの夢、左目では現実世界を見てる」 「!」 それって、それぞれの瞳が違う光景を見てるって事? そんなの……。 「……狂わなかったの?」 「まあね。ガラクタの夢から覚めてからは、ずっと地下に監禁されていたし……逃げてからも、慣れてしまえばどうって事なかったしね」 青年は、肩をすくめた。 「聞きたい事は他にある?」 「……じゃあ、アンタの名前と目的教えてよ」 ここに来て気付いたが、まだ名前を聞いていなかった。  何をするにしても、まずそれからだ。 「俺の名前は、アル」 「アル……アルって呼ぶけど、いいか?」 「もちろん」 青年ーーアルは、嬉しそうに笑った。男の俺でも見惚れるぐらいの綺麗な笑みに、慌てて横を向いた。
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