1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あのさ、なんでアンタには見えてオレには見えないの。それにアンタはどうやってガラクタの夢から覚めたの?」
その質問に、一瞬青年の顔が固まった気がした。
「……俺はね、特別なんだろうね。ガラクタの夢からは自分で覚めたんだ。そのせいかな、ガラクタの夢から覚めたはずなのに、俺はガラクタの夢を見てる。そうして、現実世界も見てる」
……どういう意味だ?
「こういう事」
青年は俺の片手を取ると、自分の右目に被せた。
「……こんな感じで右目ではガラクタの夢、左目では現実世界を見てる」
「!」
それって、それぞれの瞳が違う光景を見てるって事? そんなの……。
「……狂わなかったの?」
「まあね。ガラクタの夢から覚めてからは、ずっと地下に監禁されていたし……逃げてからも、慣れてしまえばどうって事なかったしね」
青年は、肩をすくめた。
「聞きたい事は他にある?」
「……じゃあ、アンタの名前と目的教えてよ」
ここに来て気付いたが、まだ名前を聞いていなかった。
何をするにしても、まずそれからだ。
「俺の名前は、アル」
「アル……アルって呼ぶけど、いいか?」
「もちろん」
青年ーーアルは、嬉しそうに笑った。男の俺でも見惚れるぐらいの綺麗な笑みに、慌てて横を向いた。
最初のコメントを投稿しよう!