青年

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「ん? あれ?」 通学道、オレは足を止めた。路地裏に、一人の青年がいた。空を眺めている。  それだけなら、きっとオレは無視していただろ。青年の容姿は、不思議だった。  この地域でも、他の地域でも見る事はないと思う綺麗な黒髪。優しい金色の瞳。整った顔立ち。服装は少し薄汚れだが、高価な服だったと言うのが伺える。  青年が、こちらを見た。瞳があった瞬間、心臓が跳ね上がった。  青年は、言った。 「……君は、この世界をどう思う?」 低く澄み渡る声だ。顔立ちや声からして、年齢は二十代前半ぐらい……か? 「どうって……別に普通ですけど……」 青年の質問の意味が分からない物の、オレは答えた。青年は、ふ~んと頷く。 「退屈だとは思わないのかい?」 「……そりゃあ、まあ毎日勉強や家に帰っても手伝いばかりで……」 でも、勉強も手伝いも将来必要になる物だ。だから、今はただするだけ。  そう言うと、青年は笑った。笑うその姿が今にも消えそうに見え、思った。綺麗だ、と。 「退屈に決まってるよ。毎日、同じ時間の繰り返しなんだからね。  しかし、将来か……」 「な、んですか?」 「……今の世界じゃ、将来も夢すら見れないだろうね」
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