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「ハァ、は、ァ……」
青年を追って、たどり着いたのは何もない人気のない道だった。知らない道に足が竦む。
「そう言う事だよ」
突然、上から声が振ってきた。見上げると、屋根の上に青年がいた。
「どういう事?」
青年はオレの問いに、無言で屋根から飛んだ。あっ、と短い音が、口から出た。
しかし、青年は猫が地面に着陸したみたいに、なんでもない感じで、地面に下りた。驚きで、何も言えないでいると、青年はこちらに近付いてきた。
近付いてきて分かったが、青年は背が高い。オレはもちろんその年の平均身長を、軽く越してると思う。
「俺の後を追うってのは、そういう事だよ。恐怖、絶望、崩壊、それが君を待っている」
「ちょっ、ちょっと待って……さっき、空から」
「言っても、今の君には分からないよ。それより、俺が言いたいのは、これ以上俺を追って来ない方がいいよって事」
そう言った後、青年は急に辺りに目をやり、
「ちょっと遅かったかも」
どこか嬉しそうに言った。
「何が?」
「……また、ね」
青年はまたオレの問いには答えず、近くにあった細道に入ってしまった。
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