追跡

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「ハァ、は、ァ……」 青年を追って、たどり着いたのは何もない人気のない道だった。知らない道に足が竦む。 「そう言う事だよ」 突然、上から声が振ってきた。見上げると、屋根の上に青年がいた。 「どういう事?」 青年はオレの問いに、無言で屋根から飛んだ。あっ、と短い音が、口から出た。  しかし、青年は猫が地面に着陸したみたいに、なんでもない感じで、地面に下りた。驚きで、何も言えないでいると、青年はこちらに近付いてきた。  近付いてきて分かったが、青年は背が高い。オレはもちろんその年の平均身長を、軽く越してると思う。 「俺の後を追うってのは、そういう事だよ。恐怖、絶望、崩壊、それが君を待っている」 「ちょっ、ちょっと待って……さっき、空から」 「言っても、今の君には分からないよ。それより、俺が言いたいのは、これ以上俺を追って来ない方がいいよって事」 そう言った後、青年は急に辺りに目をやり、 「ちょっと遅かったかも」 どこか嬉しそうに言った。 「何が?」 「……また、ね」 青年はまたオレの問いには答えず、近くにあった細道に入ってしまった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!