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無表情になった青年は、オレに何かを投げてきた。
「それ、飲みなよ」
投げられたビンに入ったのは、赤い液体だった。
「これを?」
うん、と青年は頷く。
迷ったが、オレはその赤い液体を飲んだ。ほのかに甘い味がし、全てを飲み終えると青年を見た。
「で、何?」
「……」
青年は無言で、オレを指差す。人を指差してはいけないって教わらなかったのか。
この何時間か過ごしていた間に、最初青年に抱いてい思いは消え失せ、今はただの変人だと分かった。どうして、オレはこの人に自分から関わろうとしたんだろ。自分が理解出来なくて、再びため息をついた。
「……って、あれ?」
ふと、気付く。手首、足首に感じていた違和感が、どこかにいった。
自分の手足を見ると、手錠と足枷が消えていた。思わず、青年を凝視する。
「……見てごらん」
青年の黒髪が、後ろに靡く。……おかしい。窓からの風なら横か前に靡くはずだ。後ろに靡くなんて……。
恐る恐ると、後ろを見る。オレは、言葉を失った。
「……ここ、どこ?」
「ん? 警察署の牢屋だよ」
青年の言葉に、違うと首を振った。
「だって、ここ……廃墟じゃん!」
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