少年と少女と病院

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「私あの饅頭食べ飽きちゃったし“売ってあげてもいいよ”」 そう言いまた少女は怪しい笑みを浮かべる。 「それなら「ただし」」 少年が言葉を出そうとしたらそれにわざと被せてきた。 「十個いっぺんに、しかも一個百円でね つまり千円で売ってあげる」 とんでもないボッタクリである。 さっきの怪しい笑みやり返す機会が来たからだったようだ。 この少年が悔しそうにする顔が見たいようだ。 だが少女の策略は失敗する事になる。 何故なら 「いいよ」 少年があっさりと許可をしてポケットから千円を取り出し少女に押し付けたからである。 「え?」 少女はまさか買うとは思っていなかったので驚きの声をあげる。 だが目の前に物を押し付けられたら受け取ってしまうのが普通の反応であり、少女も千円を受け取った。 「交渉成立」 そう言って許可も得ずに少女の部屋に入っていき饅頭の蓋を持ち上げて早速食べ始めた。 「ちょ、ちょっと! 何人の部屋に勝手に入ってきて、しかも人の部屋で勝手に物を食べてるのよ!」 少女が怒るのも当然である。 その言葉を受けて少年は周りを見て食べるのを止める。 「・・・ごめん 饅頭に夢中で全く意識してなかった」 「へ?」 少女は少年から謝る言葉が出て来たのがが信じられないといった表情をしている。 会ってから本当に短い時間しか経っていないが少年は謝ることをしない人間だと思っていたようだ。 「いや、別にそこまで怒っているわけじゃないけど・・・ていうか饅頭に夢中で周りが見えていなかったの?」 「うん」 人の部屋で勝手に食い物を食うなと言われたからか食べかけの饅頭をじっと見つめたまま頷く。 「子供じゃない・・・・」 「うるさい」 少女の言うとおりである。 少年はその言葉に罵倒で返すが目線はいずれ変わらず饅頭に注がれている。 「こんな子供に私は怒ってたの・・・」 二人は同い年ぐらいだがこの時言っているのは勿論精神的にという意味だ。 「はー・・・・そこに机と椅子があるからそこで食べなさい」 お母さんのような口調でそう言う少女が指指す方にはいかにも病院と言った感じで白いテーブルとプラスチック製の椅子が置いてあった。 その机に少年はゆっくりと、いや、案外早く移動して早速饅頭を食べ始めた。 「はー・・・・」 その光景に何かやるせない気持ちになってしまい少女はもう一度ため息をついた。
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