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目が覚めて一番最初に見えた景色は薄汚れた天井だった。
そして少年は理解した。
ああ・・・また、“死ねなかった”
そのまま下らない事を考えていても仕方ないので少年は布団から立ち上がろうと上半身をあげようとする。
しかし頭がクラクラしてそのまま布団に倒れこんでしまった。
きっと自殺しようとして飲んだ薬が抜けきっていないのだろう。
そう、少年は自殺しようとしたのだ。
でも死んでいない。
しかも“まただ”
少年は頭の中で分かっていた。
勇気・・・いや、死ぬ勇気なんてものは勇気とは言えない
だが、今回は勇気と言わせてもらう
少年は自殺をしようとして“また”勇気がたらずに中途半端に体を痛めつけたのだ
「はー・・・また僕は・・・」
薄汚れた天井を見ながら少年はため息を付く。
それから暫くぼーっと何も考えずに天井を眺めていたら廊下を歩く足音が聞こえ、少年の寝ている部屋の前で止まる。
そして扉の向こう側から若い男性の声が聞こえた。
「少年君入ってもいいかい?」
いくら待てど部屋から返事はない。
「少年君勝手に入るよ」
また声を掛ける。
勝手に入ると言ったのに入ってこない。
言葉では言ったが、遠慮をしているのだろう。
「ハー・・今度こそ入るよ」
扉越しでも聞こえるくらい大きいため息の音が聞こえ、扉が開いた。
「着替え中だったらどうするんですか先生」
少年は天井に向けてい目を男性の方に向ける。
入ってきた男性の特徴は白衣を着ている事ぐらいだろう。
年齢は声通り若く、23歳くらいに見える。
「君と俺の中だからいいじゃないか」
軽口を交わし合うらへん少年とこの男性は知り合いなのだろう。
「何が君と僕の中ですか。
また余計な事をして・・・」
「俺も君の事を救わなくてもいい日がくれば一番うれしいんだけどね」
「そうでしょうね
こんな自殺ばっかりする僕を救ってもまた自殺をするのは確定的ですものね
そりゃあ救うのもめんどくさくなりますよ
良いですよ僕は放っておいて大きな怪我をしている人を救ってきて上げてください
そちらの方が出世をしやすくなりますしね」
そう言って少年は目をまた天井に移す。
「何で君はそう受け取るのかね・・・
俺が行った意味は君が自殺しなくなるのが一番嬉しいという意味だったのだが・・・」
男性は小さくため息を付く。
少年はその優しい声が綺麗で信じられず、耳を閉じた。
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