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男性が部屋から出て行ってから暫く時間がたち、少年は喉が乾いた事に気がつく。
そこでまた立ち上がろうと上半身を上げてみる。
今度は頭が少し痛む程度で、立ち上がることが出来たようだ。
そのまま棚の上に置いてある財布を取り、自動販売機までフラフラと歩き始める。
少し歩いた所にある自動販売機の前でどの飲み物を買うか少年は少し悩み、無難なお茶を買うことにする。
何回も買いに来るのは面倒臭いと思い、少年はもう一本同じお茶を買い、両手に一本ずつ持つ。
片方のお茶を飲みながら部屋にう帰ろうとするが、部屋に戻っても何も無いことを思い出し、少年は宛もなくフラフラと歩き出す。
この病院は意外と広く、何回も入院をしている少年でも全体図は理解していない。
今日は初めて行く三階を歩いていると、向こう側から人が歩いてくるのが見える。
近寄ってきて気が付いたが、歩いては居ない。
車輪付きの歩行器に上半身を預けて体重で滑っていた。
それをじっと見ていると此方に目を向け話しかけてきた。
「えっと・・何か用ですか?」
歩行器を押していたのはまだ幼い少女だった。
若干だが、少女の頬は蒸気しており、息も切れていた。
きっとここで歩く練習を何回もしていたのだろう。
「いや、別に何も」
そう言って少年は少女が来た方向に歩き始める。
やはりこの少年はかなり失礼なようだ。
そこからすぐ近くにベンチを2つ見つけ、片方のベンチで少年は休憩をする事に決める。
そこでお茶をチョビチョビ飲みながらボーっとしていると目の前をさっきの少女が通り、それを無意識の内に目で追う。
そんな事を三回くらい繰り返しただろうか、目の前で少女が止まった。
「えっと・・やっぱり何かようですか?」
「いや、別に」
そう言いまたお茶を一口飲む。
「でもさっきから見てましたよね?」
「動くものを追ってしまうのは良くあることだろ?
例えば虫とか」
少女を虫で例えるのはどうなのだろうか。
「人を虫に例えるなんて失礼な人ですね」
そう言い、隣にあるもう一つのベンチに少女は腰をかける。
きっと止まってしまったことで疲れがドッと来たのだろう。
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