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道中は何一つ喋る事はなかった。
まあ当たり前だろう。少女は少年に怒っているのだから話しかけたくないだろうし、少年から話しかけるなんて事は考えられないからだ。
そうこう無言のまま歩き続けると三階にある一つの個室についた。
その部屋の前で少女は振り返る。
「此処で待っててください
今持ってきますから」
その言葉にトゲは余り感じなかった。
歩いている内に冷静に戻ったのだろうか。
少女はドアを少し広めに開けて入っていく、ドアを閉じないのは閉じる労力が面倒くさいからだろうか?
まあ、歩行器を使わないと歩けない彼女に取っては部屋に入り、半回転してドアを閉め、お金を取ってきてまた開ける何て行動は少しつらいかもしれない。
「ん」
少年は以外と少女の言う事をしっかりと聞きその場から動かなかった。
だが少女が部屋に入り背中を向けると不躾にも少女の部屋を観察し始めた。
暫くキョロキョロと部屋を見ていた少年は何かを見つけたのか一箇所で顔が固定される。
その時丁度お金を持ってきたのか少女が戻ってきた。
「約束通り200円です
これでお茶を売ってくれますよね?」
そう言い少年につき出した小さな掌には銀色に輝く二枚の硬貨が乗っていた。
だがその少年は受け取らず、と言うか話すら聞いていなかった。
不思議に思った少女が少年の目線を辿って行くと小さな棚の上に置いてあるお見舞いの品の一つに行き着いた。
「・・・お饅頭が食べたいの?」
そう、少年の目線の先に合ったのは10個入りの饅頭だった。
もしかしてと思い少年に聞いてみると、その言葉でようやく少年は少女に気が付き、掌の上のお金を取りその掌に自分が口を付けていないほうのお茶を乗せる。
「確かに200円受け取ったよ」
そう言いポケットにお金を無造作に突っ込む。
だがその目はチラチラ饅頭の方に行っていた。
「やっぱりお饅頭が食べたいんですよね?」
その目線を少女は見逃すことなくもう一度問いかける。
「大好物だからな」
少年は少年でありながら何て渋い趣味をしているのだろうか。
「へー・・・」
その言葉を受け少女が怪しく笑う。
その様子を見て少年は何だこいつ?的な目を少女にぶつける。
すると少女は少し恥ずかしくなったのかコホンとわざとらしく咳をしてから次の言葉を切り出す。
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