体剣使い

32/32
前へ
/46ページ
次へ
要するに、ただの道案内と変わらない、と言う事だろう。 自分の身は自分で守れ。 気が向けば助けない事もないが、期待は薄い。 そして無償と言うが、損害があった場合しっかりと請求する意思があると言うのは、いつどんな扱いをされていようと、もしもラスに損失が生じれば料金を請求できると言う事だ。 一見良心的にも見えるし、恐らく半分程度は本気で言っているのだろう。だが、もう半分は、しっかりと保険を懸けている。 機嫌を損ねればそのバランスは簡単に崩れ、いつでもラスに有利に傾く位置に天秤は置かれている。錘を持っているのはラスだ。 いつでも自分の好きな様に事を運べるような条件を揃えている。 そして、少女で遊んでいるのだ。 「どうする?」 と、首を傾げて。 それでも、少女には一つしか選択はない。 「それで構いません。 ラグゼンシアまで、よろしくお願いします」 そう言って少女は綺麗に頭を下げた。 傭兵は、楽しそうだった。 「確かに、依頼受諾だ。 せいぜい死なないように頑張んな」 暫くは、退屈しなそうだ── 胸中の呟きを隠す気もないまま、 名の通った体剣使いはニヤリと笑ったのだった。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加