聖墓

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「さて、じゃあちょいと悪いが寄り道させて貰いますよっと」 1頭の馬に跨ったラスの背後からは、残りの3頭が1列となって並んでいる。先頭の鞍にもう1頭の手綱が結ばれ、そしてその1頭の鞍にももう1頭の手綱が結ばれ…といった具合に。 「寄り道、ですか?」 愛馬であるアオに跨った少女は、レイスと名乗った。 それは愛称なのだろうが、ラスとて名乗ってはいないのだからお互い様だろう。 「まぁ寄り道って言ってもどっちにしろ通り道にある街だけどな。 通り過ぎて次の集落まで進んだ方が日数の短縮は出来るが、旅支度にちょっくら寄ってからだ」 レイスは旅をした事がない。 何が必要で、どんな注意が必要かもまるで見当が付かない様子で困った様に考え込んでいる。 「必要な物くらいは教えてやるよ 旅用具の小遣いは自分で何とかするんだな~」 そう呑気で他人事のような言葉は、レイスの中に重荷を落とした。 身一つで飛び出したのだから、当然所持金など0だ。 だが旅支度を整える事が出来なければ、ラスは簡単にレイスを置いて行くだろう。首都まで辿り着くにはラスに着いて行かなければいけない。だがそれは自力で、という条件付きで、旅慣れしていないレイスがその条件下で無事目的地到着を図れるのは、万全の装備を整え、レイス自身以外の能力に頼るしかない。 それに先立つものは、お金、だ。 「ま、着くのは今夜だ。 何とかしな」 レイスから視線を前に向けて、ラスは馬の腹を軽く蹴る。 よく馴らされた栗毛の馬は、それだけで騎乗者の意図を理解して前進する。連なる3頭も前者に括り付けられた手綱が引かれる事によって大人しく前進する。
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