聖墓

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とうとう堪え切れない、と言うように最初は含み程度だった笑いも、次第に大きな笑いへと変わっていく。 「ギャハハハハハハッ」 その後も延々笑い続け、レイスがうんざりとし始めた頃、ようやく余韻を引き摺りながらも立ち直り、レイスに対して「面白い奴」と言い放った。 「な、失礼なっ」 「ところでお嬢さん、その坊やをどうするか充てはあんのか? 街に持ってきゃあ、死体なんぞ鳥の糞ぐらい転がってる世の中だ。処分はしてくれるが、他の誰かも分からん死体とそれこそゴミ扱いで焼かれて、その辺の川に捨てられるだけだ。」 それを聞いて、レイスは目を見開き、顔を青ざめさせる。 「そんなっそれじゃあ魂への冒涜だわっ!!」 「食べ物のゴミと同じくらい人間の死体はどんどん増えてく。 そんな中、身元も分からん死体を一体一体丁寧に弔ってる余裕なんぞ、人にも、国にもないんだろ。 ま、それが嫌だってんなら、場所を教えてやるからそこに埋めてやんな。 何処に埋めるかは勝手だが、その辺の木立に埋めたって、蒔や槍に使われる木の伐採で踏み躙られて、草むらに埋めれば獣に掘り返され食い荒らされるだけだ。 どうする? ちゃんと眠れる場所まで行って弔ってやるなら、日が沈むまでそう時間もねぇぞ」 そう言われてレイスが空を見れば、仰ぐまでもなく低い位置にある太陽は、もう沈む準備を済ませて、大地を赤く染め始めた所だった。 「お願いします。 この子を、せめて、静かに…」 レイスの瞳に揺れるのは憐憫で、哀しみで、孤独で、愛だった。 いや、愛情が深い故に、それは全て哀しみや孤独に覆われている。 弟を撫でるその掌は優しく、労わるように。 血だらけのその光景も、一日の役目を果たした最後の輝きが、赤く、そして何よりも美しく見せた。 鮮烈な赤に彩られ、風景との境界は橙に明るく線を刷く。橙の境界の他は暗く影が落ち、深く、赤く染め上げる。禍々しい筈の凝った命の漏れ出した源泉も、熱さに曝され爛れた醜部も深い赤に隠され、ただ温かみの溢れる光景が広がっていた。 愛する者をその腕に包み抱き、逆光は神秘的に赤い景色を彩る。
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