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これ以上の所はないだろ?
そう言わんばかりのラスの態度に、レイスは内心では反発したいのに、反論の言葉が見つからず閉口する。
「だって、そんなの…
寂しいじゃないですか」
唇を噛み締めてそう絞り出すレイスの言葉に、ラスは当然のように返す。
「お嬢さんが会いに来てやるんだ。文句は言わんだろ」
「………」
レイスは目を見張ったまま、ラスの顔を凝視する。
「…俺の顔はそんなに見応えあるかね?」
「よっぽど自信をお持ちで。
……普通の人はここまでは来られないんでしょう?私だって道に迷います」
「まぁな~。
地図でも描いてやろうか?」
そんな事を言うラスが、何を考えているのかレイスには理解不能だった。
人を罠に嵌める事には欠片も罪悪感も抱かない癖に、何を言ったって飄々としている癖に、燃える村を見ても景色の一つみたいな顔をする癖に、簡単に人を殺す癖に。
レイスの心情に沿うように、何の得にもならない事をする。
「いいんですか、この場所を私なんかに教えて。」
「別に隠してた訳じゃあない。
それに、お嬢さんは人に教えたりはしないだろ?
弟が静かに眠る事を望んでるんだしな」
「これじゃあまるで共謀だわ」
「いいねぇ~。差し詰め共犯だ
危ない事は嫌いじゃない」
そう言いながら、ニヤリと笑う。
何を考えているのか、さっぱり分からない。
……でも、今は信じよう。
肉親の安らぎを願って少女は死神と一つ、秘密を抱える。
それは爆弾か、安らぎか、死神を知らない少女には到底想像もつかないことだろう。
そして星が炯炯と瞬く夜。
竜の中に一つ、安らかな魂が迎えられた。
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