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ゆったりと馬上で揺られていたラスの動きが不自然に固まる。
「……あ~、今何時?」
「夜ノ二の刻」
冷静にそう口にするレイスに、ラス考えるように上を見て「ん~」と曖昧な笑みを浮かべている。
そしてレイスへと誘うように視線を投げかけた。
「間に合うかな?
間に合わなかったら野宿だ。
俺ぁこの資金源を守ってやらんとならん。お嬢さんを守る余裕も、まぁ無くはないが、気分次第なんでな。保証はできねぇな…
それが嫌なら……」
その言葉尻をレイスは攫う。
「回りくどいですね。
長口上がお好きなら、どうぞその資金源の馬にでも聞いて貰ってはいかがですか。
要は───」
ピシッ
比較的軽い音が響く。
「急げと言う事でしょうっ」
そう口にするが早いか、レイスの指示に従ってアオはその脚で駆け出した。
流石は俺が見込んだだけはある。あの馬早ぇ~。
呑気にそんな事を思いながらも、ラスも即座に資金源である馬の尻を叩く。先頭の栗毛が走り出せば、続く3頭も僅か一瞬遅れて駆け出す。
が、ラスの方は4頭。それぞれが前方に衝突しない距離を保つ為、自然と遅くなる。どの馬も全速とは言い難いとは言え、アオとの差は歴然としていた。
「ヒュ〜
早い早い。
俊脚だなぁ」
他人事のようにそう呟いて、離れて行くレイスとの差に焦る事もなく駆ける。
ま、お嬢さんが先に着けば、俺にも気付くだろ。
やっとその大きさが認識できるようになった距離をラスが通過した頃にはレイスはとうに巨大な石壁への入口、跳ね橋に辿り着いていた。
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