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夜空に瞬く満点の星空に私は今日も手を伸ばす、この一瞬が、この一時が私に許された時間なのだ。
夜中の十一時から、十二時、つまり、一日の一時の時間しか私の目は光を宿さない。その時間以外は暗い闇が目を覆い隠してしまう。
『怪物』
町の住人達は私のことを、怪物と呼んだ。怪物の娘とそう呼んだ。悲しくはないもう慣れてしまったし、私は彼らに何もしない。彼らも私に何もしない。見えない協定が横たわって、町外れの古小屋に住まわせてもらってることを感謝するべきだ。
何が正しくて、何かが間違ってるのかもしれないけれど、私はこの日常があればいい。爪弾きにされても、除け者でもなんでもいい。どうせ、目が見えない私なんて役立たずだ。
「夏、なのね」
声に出す、降り注ぐ日光は見たことはないけれど、じっとりとまとわりつく熱気が季節が夏だと教えてくれる。町の学生はもう、夏休みなのだろう。そっと町の視線を向ける。
「………」
目が光を失っていく。もうすぐ十二時だ。小屋に戻らないと。何も見えなくなるまえに。
「何かが正しくて、何かが、間違っている」
私はふと思う。間違っているのは私でここに居てはいけない。そんな気持ちにさせられる。
「どこにも行けないのよ、私は、どこにも」
行けない、そう呟くけれど、真夏の夜空に消えるだけ。答えてくれる人なんていない。
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