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その後。トーキは昼過ぎまで居て、パン屋の手伝いだからと帰っていき、夜がきた。私の目が光を取り戻す。
パチパチと数回、まばたきして辺りを見渡す、程よく整理整頓されていた。トーキのおかげだ。私がしてもここまでいかない。
トーキは知らない。私が一日のうち一時間だけ目が見えることを知らない、なかなか言い出せないまま引きずっていき。こうなった。掃除も何も、この一時間のうちにやってしまえばいい、乱雑になってしまつけれど、私しか居ないのだからそれでいい。
「何かが正しくて、何かが間違い、なら、そのどちらかを選ぶ時、貴方はどちらを選ぶ?」
その昔、トーキに問いかけた。
「僕は、正しいほうを選ぶかな」
ちょっと迷って、トーキは答えた。その正しいという答えを選んだとしても、自分を苦しめるだけなのに。町の人達と同じく怪物と呼ぶか、それとも違った対応をするか、正しいのはどちら? 間違いなのはトーキ? それとも町の人達?
それとも、どちらも間違い? 私が居ることが間違い? どの答えもしっくり来ない。ただ、トーキには私を怪物とは呼んでほしくないと思うのは、我が儘なのかもしれない。
外に出た。空気を吸って、吐いての深呼吸。相変わらずの夜空と暗闇の世界だ。
トーキはいつもこんな世界を見ているのだろうか? きっと、私の知らない物だってたくさん知っている。
「何かが正しくて、何かが間違い。答えはどこにあるの?」
当然のことだけど、答えなんて返ってこない。
「ユーリ?」
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