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物語に登場する怪物はいつだって勇者に倒される。みんなに嫌われて、悪役で、人を殺す。それが怪物の役目だから決まっていることだから。人となれ合うなんて間違いだった。トーキの優しさに甘えて見てみぬ振りをしてさ先送りにしていた事実がこうして追いついてしまったんだ。
「ごめんなさい。トーキ」
何かが正しくて、何かが間違い。その答えは。怪物の私が居ることだ。
きっと、ずっとずっと間違いだった。怪物の私はずっとずっと一人で居るべきだった。人と触れ合うなんてしてはいけない。トーキの焼いてくれたパンも、トーキの学校生活の笑い話も、掃除するときに時たま聞こえる、トーキ音痴な鼻歌も、トーキの手の温かさも全て手放すべきだった。
ドンドンと、扉が少し荒くノックされる。ユーリと名前を呼ばれた。
「帰って」
耳を塞いで、膝を抱えた。膝小僧に額をうずめて、
「帰って、お願いだから帰ってちょうだい」
「ユーリ」
「気安く、名前を呼ばないで!! 貴方だって私のことを怪物だって思ってるんでしょう? なら、もういい。迷惑なの。目障りなの、帰って!!」
言いたくないことがたくさん、溢れてきた。これでいいんだ。怪物は一人でいるべきなんだ。
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