第三章 新入生歓迎会(前編)

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鈴「サンキュー。俺の事も名前で呼べよ、狼」 狼「………分りました。……れ、鈴君」 やはりまだ名前で呼ぶということに抵抗がある。 鈴「そうだ。俺、午後から行くから」 狼「なn……そうですか、分りました」 きっとまだ教室に入る事が嫌なのだろう。鈴君の目は少し不安の色があった。 狼「俺は、教室で待ってるので来てくださいね」 鈴「……あんがと」 鈴君は俺の頭をポンポンと軽く撫でて食器を片付けに行った。 その仕草がまたイケメンすぎる。……別に羨ましいとか思ってないし! 鈴「そういえば、明後日”雨”が降るって言ってたな。室内洗濯にするか」 ドクンッ ………雨………。 雨と聞いて俺の胸の奥が大きく跳ねた。 俺は胸をギュッと押さえこんだ。押さえこんでいないといろいろな感情があふれそうになる。 呼吸がどんどん乱れていくのが分る。 鈴「おい、そろそろ行かn、ってどうした!大丈夫か!」 鈴君がキッチンから出て来て俺を見た瞬間驚愕した。 今の俺は呼吸を乱して、額に汗をかきながら胸を押さえている。 こんな姿を見たら誰だってびっくりしてしまう。 ダメだ。雨と聞いただけでこんなになってしまう。情けなさすぎる。 それでも俺の呼吸は戻らずどんどんおかしくなってくる。 狼「あっ、ヒュー、はぁはぁ。はぁ、ぁ、ヒュー、はぁ」 鈴「おい!くっそ!」 鈴君はポケットからハンカチを取り出して、俺の口と鼻を覆った。 狼「んっ、んん」 鈴「落ち着け!ゆっくり息を吸え」 背中をゆっくりと撫でながら俺を落ち着かせてくる。 狼「はぁ、はぁ。……すみま、せん、でした」 まだ少し乱れているけどだいぶ治まった。 鈴「いや。もう大丈夫なのか?」 狼「はい。ご迷惑をおかけしました」 鈴君は俺の顔を心配そうに覗き込んでくる。 俺のためにそんな顔をしないで。 狼「ほんとにもう大丈夫ですから」 鈴「……分った。だけど無理すんなよ」 狼「はい」 確かに気をつけなくちゃいけない。 今回は近くに鈴君みたいな人がいたからよかったけど、誰も居なかったら確実に大変なことになってたくさんの人に迷惑をかけていただろう。 時計の方に目をやるとそろそろ行かないとヤバい時間だったため、鬘とメガネをかけて行く準備をした。 狼「それじゃぁ、俺は行きます」 鈴「…おう。また午後に」 狼「はい」 そうして俺は部屋を後にして校舎に向かった。
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